アドリブ練習法比較

さて、ここからはアドリブの練習法を考えてみます。前エントリでいうなら、どう無意識に意識を叩き込むかがここでの課題です。世の中には多数の先人がおり、ジャズギターも例外ではありません。しかし、先人たちの方法は微妙に異なっていて、どの方法が自分が好きな音楽に近いのかが分かりにくいのも事実です。ということで、アドリブの練習法について、有名どころを比較してみました。

1.おふとんJAZZ

(本郷亮氏:http://www2s.biglobe.ne.jp/~hongo/
このサイトでは、バッキングを非常に重視しています。ソロもその流れにのっとって

「コード・フォーム」と「フレーズ」を、1対1に対応させ暗記する。そして曲中にそのコード・フォームが登場したら、とにかくその対応フレーズを条件反射的に弾く。

という「コード崩し」を推奨しています。この弾き方でいくと、考えなければならないのは主に○M7、○m7、○7、○m7-5の四種類です。メリットは転調にも全く動じないこと。デメリットは、コードごとでパターンが切り替わってしまうためにメロディラインを作るのが難しいことです。この弾き方はジョーパスなど基本に忠実なモダンジャズを演奏したい方にお勧めだと言えます。

2.ジャズギタースタイルマスター

(名取穣一郎氏:http:/www.joey-web.com/jazz/)
このサイトも、基本的には上サイトと同じ方針と言ってよいと思います。というのは、基本的なコードごとのリック(=フレーズ=コード崩し)を紹介しているからです。ただ同サイト「アドリブとは」というページには

また、アドリブ練習で重要なのは「歌う」事です。
アドリブは、「思いついたメロディーを瞬時にギターで弾く事」なのですから、自分の弾いている音を全て歌えるのが理想です。

と書かれていて、「リック=縦のライン」を練習していくことでリックを意識せずに「歌う=横の流れ」を生み出すのが大事だと言っているようにも見えます。しかし、リックと歌うことをどう融合させるのか(タテとヨコの折り合いをどうやって付けるか)には言及されていないようです。

3.布川俊樹氏

(ジャズギターの金字塔/秘伝!新.ジャズ.ギター.マスターなど。個人HP:http://www012.upp.so-net.ne.jp/n-valis/
おそらくジャズギターの教則本の中で一番売れている著者(プロギタリスト)です。基本的な考え方は

トニック、サブドミ、ドミナントに分けてフレーズを覚える

という考え方で自由度が一番高い(3種類しか覚えなくていい)ので、めんどくさがりな僕はこの方法が一番好きです。またメリットとして、CDからフレーズをコピーするときに、下のコードがいまいちわからなくても使いやすいことがあります。既存のカラオケ(たとえば251パターンとか)に合わせてみて「おおこれはトニック上で使えそうだ。とかサブドミ上でもいけるな。」というのを耳で判断すればいい訳です。(ちゃんとフレーズの下で流れているコードを採譜しろって意見もあると思いますがw)

 また、同じ○M7でも、音楽上もトニック(=明るい)のⅠM7とサブドミ(=ちょっと不安)のⅣM7は、コードの機能(感覚で感じる雰囲気)は違います。感じる雰囲気が違うのに、同じコードというだけで同じフレーズを弾くと言うのは、やはりコードに規定されて弾いている気がします。(モダンジャズは逆にそれが雰囲気を出すのかもしれないけど)それより実際にコードから感じる雰囲気(=機能)を重視したほうが、より音楽的になるのかなぁ、と思うのです。そういう訳で、コンテンポラリージャズを弾きたい方にはこの方法がお勧めではないでしょうか。


 布川氏は個人のHPを開設されているのですが、この中のQ&Aコーナーが感動するぐらい役立ちます。その中でタテとヨコの関係についてこう語っています。

とにかくあーあー川の流れのよーにー大きなコード進行の流れを感じ、この身をまかせることです。僕は基本的にはトーナリティが移行しない限りたしかにcenter keyだけを見ているかもしれませんね。自然にメロディがコードっぽく行きたくなったりケーデンスを必要とすると思ったときはそれを弾くわけです。でもいまはこうだけど、学生の頃は徹底的にコード進行にフレーズをはめる練習をしましたよ。

という訳で、練習時はタテを中心に意識して練習、本番はヨコ(歌うこと)を重視するという形で良いようです。


共通項

とにかく3方とも「短いフレーズ」と「それがいつ使えるか」を体で覚えることに注意を払っていることが分かります。スケール派はいないのです。スケールはあくまで頭を整理するための道具であって「短いフレーズ」「いつ使えるか」が大事だと言えます。