プロレベルになるために必要な年数

練習の質などによってもかなり差があると思いますが、大雑把に推定してみたいと思います。まず初心者がプロになるためにどの程度練習したかという例として

・・・西部に住んでいた頃、隣人が母に出て行ってくれと迫ったことがある。私の吹くサックスの音で気が狂いそうになると言うんだ。当時は1日11時間から15時間吹いていたからね・・・。私はそれを3、4年間続けていたんだ。”
チャーリー・パーカー 1954年

を参考にすると、11〜15時間/日×3〜4年=12045〜21900時間が必要、という数字なります。この例の場合はチャーリーパーカーというジャズの巨人なので、一般のプロになるための最低練習時間はもう少し少ないかもしれません。そこで、仮に最低プロ練習時間を10000時間としましょう。

普通の人が11〜15時間も毎日練習することは(よほどストイックな人でない限り)不可能なので、1本気モード(1日7時間練習)、2並走モード(1日2時間練習)に分けて考えてみます。


1本気モード(1日7時間)の場合:10000時間/7時間=1428日。つまり約4年。

2並走モード(1日2時間)の場合:10000時間/2時間=5000日。つまり約13年。

こうして期間にしてみるとリアルな数字になりますが、練習のひとつの目安にしても良いのではないでしょうか。ここではまったくの初心者という設定だったので、経験者の方は最初に今までの蓄積練習時間を引くとより正確な値が出ると思います。

演奏の質を高めるためにすること

演奏の質は目に見えにくいので、録音をするなどして自分の演奏を客観的にフィードバックすることが大切です。脳は、目に見えるわかりやすい報酬(どれだけたくさんのフレーズをコピーしたか、どれだけ難しく速いフレーズを弾けるか、どれだけ多くのスケールを知っているか…など)に誘惑されてしまうからです。


つまり、質の練習にはある程度意識的に客観的な目を入れることが必要なのです。さもないと人間の意志は弱いので「量」をこなすことが目的になってしまいます。


演奏の質は、量以上に「ギターがうまいかどうか」に直結します。どれだけ味のある弾き方ができるか、グルーブする弾き方ができるか、という音楽の本質に近い部分を練習するのですから、当然ともいえます。質は簡単には数値化できないので、分かりにくいのですが、量に惑わされずに質を追求した練習をしたいですね!

コピーの壁とその対処法3

◆3(カッチリコピー)→4(完全コピー)の壁
この3と4の違いは、「雰囲気が出せているか」なので、
練習すべきは「アーティキュレーション」部分です。

ある程度きちんとフレーズも弾けて、リズムもしっかりしてくるとここまで気を配る余裕が出てくると思います。このアーティキュレーションがフレーズのキモとなります。食材で言ったらうま味ですね。

対処法は以下の三点が大切だと思います。

・ 音源をアーティキュレーションに注意して聴く。書けるものは譜面に書く。
・ 別の運指を考えてみる。
・ MTRでチェックする。

練習法などは、基本的には2→3の壁と同じなので割合します。

コピーの壁とその対処法2

次に
◆2(なんちゃってコピー)→3(カッチリコピー)の壁
意外とこの2→3の壁が意外と越えられていないフレーズはあるのではないでしょうか?弾いているときに「自分は弾けている」と思っていても、客観的に聞くと思った以上に弾けていないものです。

2(なんちゃってコピー)と3(カッチリコピー)の違いは、

・ メロディーが正確に弾けているか(省略したり適当に弾いていないか)
・ リズムにきちんと合っているか

の2点です。そこで、解決策としては

・ 弾けていない部分の反復練習
まずはゆっくりのテンポから。とにかく正確に。徐々にテンポを上げて演奏します。最初は嫌になります。が、毎日続けていると脳が慣れるのか、筋肉が発達するのか、徐々に弾けるようになってきます。


・ メトロノームやCDに合わせて練習する
上記と若干ダブりますが、足で1,2,3,4と刻むだけでも良いので、リズムに合わせて練習します。リズムは自分では弾けていると思っても、ちょっとでもずれると、聞き手に「ああミスったな…」とバレる恐ろしい部分なので(笑)しっかり練習します。


そして、ここが大切なのですが、
・ MTRDTM,ICプレイヤーなどで自分のプレイを客観的にチェックする
必ず原曲と合わせるか、もしくはクリックをならすなど、自分のプレイ(リズム)は周りと合っているかを見て、弾けているかを確認すると良いと思います。かなりメンドクサイ作業ではあるのですが、この部分なしでは、(自分に厳しく、かつストイックな方は別ですが)自分のプレイに対する判断が「まぁこんなもんだろ!」となあなあになってしまい、何のために練習したのかわからなくなってしまいます。他人に見てもらうのも良いですが、時間的な制約(毎日見てもらえるわけではない…など)があると思うので、録音が良いと思います。

この方法で客観的に「OKだな」と思うまで続けると良いと思います。


(おまけ:練習への組み込み方の例)

1.調達: コピーする曲、またはフレーズを決めて採譜するか譜面を用意する。
2.暗記: 曲を何回も聴く、あるいはギターを弾くなどしてメロディーを覚え、ある程度通して弾けるようにする。
3.録音: MTRなどに録音する。ここは練習する必要あり、という部分をチェックする。
4.練習: チェックした個所をメトロノームに合わせて毎日30分程度練習する。
(以降3→4の繰り返し)

これで適当に弾いてきたフレーズがカッチリ締まって聞こえるようになると思います。

リズム練習はなぜ重要か?

今回は音楽の三要素である、メロディー・ハーモニー・リズムの中で、「リズム」がなぜ重要だと言われているか考えたいと思います。

まずリズム練習の意義は、グルーブを生み出すリズム感を良くするためです。ここで重要なのは「リズムは演奏者が感じている以上に、聴き手に伝わる」という事実です。これは、自分の演奏をCDなどと合わせて録音するなどして客観的に判断するとよくわかります。これをするとよっぽど上手い人以外は「うわーこの部分のリズム、ちょっとズレててめちゃくちゃキモチワルイ!」という気持ちを経験することになります。


なぜこのように微妙なズレがキモチワルく感じられるのでしょうか。それは、聴覚はタイミングに非常に敏感にできているからです。私たちのタイミングの検知能力は、音と音の間に1ms(1/1000秒)の空白があるだけでそれを理解してしまうほど正確にできているそうです。(左右の耳のタイミングを検知する能力はさらに高く、一方の耳に他方の耳よりわずか20マイクロ(1/1000000秒)早く音が届いたとして、その差を検知できるそうです。)これがリズム練習が重要な理由です。


では1/1000秒=1msのズレを人間の耳が検知できるとして、演奏に与える影響はどれほどなのでしょうか。テンポ120の4分のリズムを弾くと仮定して考えてみます。

テンポ60で1拍1秒なので、テンポ120で1拍は500/1000秒。つまり、テンポ120の4分を弾く時には前後1拍に500の検知ポイントがあって、その中から正確に1/1000のタイミングを見計らって弾かなければならないことになります。そう考えると、いかに正確なテンポを保つのが難しいかが実感できるかと思います。



リズムはどうしても上達が自分では「分かりにくい」ところなので、ギタリストは一般的にメロディーやフレーズの速さなどに注目が行きがちで、メロディーやハーモニーの練習をして、リズムはなんとなくバックに合わせれば良いのでは??そんな細かいこと誰も分からないんじゃない?と思いがちです。(僕だけかもしれませんが…)ですが、「プロのミュージシャンと、アマチュアのミュージシャンの違いはリズムにある」と言われるように、1/1000sの感覚でしっかり弾けるようになることが、とても大切だと言えるのではないでしょうか。

参考:MIND HACKS     出版社: オライリージャパン (2005/12)